引越を考える〔その6〕1999年1月号

引越受注が増えるには

 正月なので、少し景気づけしたい。悪いことを書くのはことかかないが、少しはいいこともあるはずだ。まず、秋の住宅金融公庫申し込み(期間11月2日〜12月25日)が、全体で110,245件、前年同期比で44.7%もの大幅増となり、金利2%が大きく効果を上げた内容となった。特に、新築の一戸建てでは70,400件(同49.9%)と大幅な伸びとなった。
 これによる引越需要は確実に11万件あるわけで、この部分を引越業者がどう奪い合うかが鍵だ。実際に、この一件が私自身となった。現在の住宅金融公庫制度自体は、かなり緩和されており、使う側として非常に便利だ。ただ、申請手続きはやはり、やっかいなため、ハウスメーカー、マンションメーカー側が代行しているのが現実だろう。
 このなかで、どう引越業者が入り込むかといえば、一番いいのが申請者リストが手に入ればいいことになる。しかし、これは困難だ。でなければ、建築確認申請のデータを収集することだ。これは意外に難しいものではない。自治体によってはオープンにしており、建設分野の専門紙などに速報が掲載されている。引越業者であれば、建築確認情報は基礎データといっていいだろう。
 引越業者にとって、施主と施主の現住所がわかればいいわけで、このデータの入手が、いい顧客を見つけるポイントである。
 今回、自分で新築して感じるのは、ハウスメーカーと施主との関係が大きく変わっていることだ。まず、住宅着工戸数が減少している現在では、建設価格の値引きは当然になっており、施主の意見が大幅に受け容れられるといっていいだろう。
 だとすると、ハウスメーカーと提携している引越業者が直ぐに、引越需要を得るきっかけとなるのは、難しい面がある。
 それは、住宅建設にかかる費用が高いため、引越料金を含めた提案が難しくなっているからだ。私の場合、3社の大手ハウスメーカーのプレゼンには引越の項目はあっても、引越業者をどうするか、という点に触れようとしなかった。
 ハウスメーカーを決めて分かったのだが、「グループ会社の運送会社は高いので紹介したくない」「ほとんどのお客様が、独自に選ばれます」という返事だった。
 これは意外だった。しかし、現実には建設本体価格、手続き費用、付帯費用の総額が、数千万円単位であるため、引越に掛かる費用、建て替えであるなら、建て替え期間の賃貸物件の家賃が問題となってくるわけである。
 あるハウスメーカーは建て替え用のマンション、家を用意しているケースもあった。こんな時代だからこそ、施主に直接、関わるか、ハウスメーカーの営業マンに、「グループ会社では高いですが、知っている引越業者ならかなり安いですが、紹介しましょうか」と言わせる関係を持つことも重要かもしれない。私自身、ハウスメーカーの営業マンに良い引越業者を紹介したくなる衝動に駆られる。



引越を考える〔その7〕1999年2月号
資材の選定

 この時期、資材の選定がほぼ終わった頃だろうか。先日、東京都トラック協会の引越部会で講演させていただいた。その日、会館内で資材などの展示コーナーが設けられていた。引越の資材で思い出すのは、あて布団のメーカーや巻き段ボールなどの納品をしている業者とのつき合いだ。こういった分野は意外に規模の小さな業者が多いため、運賃を購入先が見るのが通例だった。引越を専門にしている業者となると、1、2月は忙しいものの閑散期が長いため、保管する機能も必要だ。しかし、家族で行っている零細業者が多かった。
 しかし、引越業界が急成長したため、大手段ボールメーカーが直接販売を手掛ける時代になり、価格が急速に下がった分野だ。
 資材の工夫では、ヤマトのらくらくパックの登場の時の新資材には驚いた。お皿を布状のもので、一枚一枚入れていったり、瓶類は格子に区切られたケースが登場し、思い切った資材の投入を行った。ただ、米国では戦前から、専用のケースは数多く出ており、日本での資材開発が遅れていただけかもしれない。こういった資材開発が、同業他社との差別化のために大手で積極的に開発されてきているが、常に課題となるのが作業員の使い勝手と、お客様のイメージである。
 例えば、布団タイプの資材で家財の包装を行う場合、作業はしやすいものの、慣れないとすっぽりと家具が落ちたりしたり、又、凝ったケース、資材を作っても、コストの割に顧客に評判が悪かったりすると、使わなくなったり、開発努力の割には、その効果が低い。
 今回の資材コーナーでは、跡がつかない粘着テープなど、簡易なものが受け入れられやすいのかもしれない。
 現在、空気を使って食器類を押さえる仕組みや、いろんなものがあるが、結局は段ボール、巻き段ボールなどに落ち着くのだろうか。しかし、段ボールの無料進呈はどこまで行くのだろうか。定価200円ほどのものが、50枚も無料になっている事が増えた。それをしていない業者でも見積もり段階で、他社のサービスレベルを比較して、交渉されたらサービスせざるを得ないのが現実だろう。
 でも、考えてみたら定価200円のものが80円ぐらいで仕入れされていても50枚サービスしたら、4000円は確実に値下げをした計算になる。しかし、このコストはどこかで補わなければならないわけで、最近の引越価格を見ると、どうも仕入れ価格をより下げることに走らないと、利益が出ないような状態になっているような気がしてならない。もし、一日一回の仕事しかとれないならば、資材を含めて、現在の価格競争下では、こういったコストこそきっちり取って、全体の価格設定を見直すようにしたほうが良いと思うのだが。
 価格を表に出す作戦であれば、人件費、運賃の方が落とせる部分が現在は多い時代に入っているはずで、そこにメスを入れて価格設定を考えてみたらどうだろうか。



引越を考える〔その8〕1999年3月号
引越の営業マン

 先日、引越しの見積りをお願いした。今まで、引越経験は単身赴任的な引越しも含めて11回の経験があるが、なぜか見積りの立ち会いは少ない。奥さんにしてもらっていたせいだが、今回の見積もりで、気になったのが運賃だった。距離が100メートルばかりしかはなれていない引越しで、運賃をどういう計算式で行うのか、気になっていたのだが、明確に裏打ちされた運賃料金ではなかった。
 結局運賃だけを見ると6万円ほどになっていたが、この引越の場合は、距離が近いため2トン車2台をピストンで行う方法を提案したが、あくまで、運賃だけが表示されており、どういうトラックの使用の仕方をするのか、わからない見積書になっていた。
 逆にきめ細かい見積書が必要なのかが、気になった。もっと、大胆に容積と作業パッケージと距離もしくは、必要時間による料金体系にしたほうが、分かりやすいと思った。
 引越をする側にとったら、別に積み重ね式の見積もりをされていても、結局はどういう作業を家族がするのか、しないのか明確になっていることが、引越し料金をはっきりさせるのではないかと思う。
 極端な話、作業員派遣会社から、発・着で2人ずつ雇い、車両は2トン車を普通の運送業者で使い、資材会社からリースで養生関係を行えば、10万円ぐらいでできる引越しだ。しかし、引越しというカテゴリーでやるなら、引越し業者独自の料金システムがあってもいいような気がする。
 その代表がヤマト運輸の「らくらくパック」だが、もう少し他社も思い切った料金体系を作ってみたらどうだろうか。それから、ピアノが別輸送になっていたが、パワーリフトがあるのであれば、引越業者による同時のピアノ輸送を期待していた。距離が近いので、そういったこともできるのでは、と思ったが、そうではなかった。
 意外に引越しのシステム化が進んでいないことが気になった。営業マンも、容積換算に関して、本当に大丈夫なのか、心配な気がした。前回の引越しで300ケースもの段ボールを必要としたのだが、今回はそこまではいかないかもしれないが、そこそこの量になりそうだ。
 話は違うが、最近事業を始めて、若手営業マンと接することが多いが、自分たちの商品について知らない人たちが多い。それから、社内の仕組みについて認識が不足しているケースが多い。
 現在の消費者、経営者はモノを買うとき、かなりの研究をしている。しかし、営業マンの知識不足が目立つ。それは商品知識とともに、社会的な知識、商売に関する基本がどうも徹底されていないような気がしてならない。
 ミスがあれば、よくわびるが、その場しのぎの対応で済ましており、できるだけ問題が出ないようにしているだけで、営業マンは引越しに関する消費者の立場を理解する努力が必要だ。
 私が知りすぎているせいもあるが、企業としても営業マンのプロを育ててほしい。そういった人との会話は面白いモノだ。営業マンに教えられることもある。そういった出会いを期待したい。



引越を考える〔その9〕1999年4月号


引越業者の傾向

 先日、東京都トラック協会引越部会の研修会で講演をさせていただいた。この連載がきっかけのようで、こういった場を提供していただきありがたかった。折角の講演なので、来場者にアンケートをさせていただいた。
 質問項目は、引越受注と引越料金、付帯サービス、引越事業の課題、今後の引越事業に関して行った。100人を超える出席者に対し、回答があったのが62名だったが、ある傾向が出てきたので紹介する。

受注増加の10人は意外な数字

 引越受注について、昨年と比較して少し増加も含めて増加傾向にあると回答した人が10人もおり、こういう厳しい時期としては思いがけない数字だ。また、引越料金について、昨年よりもアップしていると回答したのは唯一1人のみ。ダウン傾向にあるのが49人と回答者の8割にも達しており、過当競争の中で価格低下を反映した数字となった。

作業員が課題が32人と最多

 現在の付帯サービスについて課題がある点では、作業員についてが32人も課題があると答え、続いて電気工事となっている。理由について設問をしていないが、サービスレベルの低下と思われる。
 同様に引越事業を行う上で課題となる点について聞いたところ人材面と回答した人が36人で最も多く、次に資金・収益について課題があると答えている。これは、管理部門、営業部門での人材面での課題をあげているものと思われる。
 今後の引越事業について、研修会に参加するぐらい熱心な人たちに聞いただけに、今後も積極的に取り組むと答えた人が圧倒的に多かったが、規模の縮小も念頭にあると回答した人も12人いた。ただ、撤退すると答えた人はさすがにいなかった。
 当日参加された方は経営者もいるだろうが、どちらかといえば現場責任者、部門責任者といった人たちが多く、東京の引越業界を代表するメンバーが参加しているだけに、このアンケートは貴重なモノだ。
 ただ、引越部門の人材がカギを握っている感じが強かった。



引越を考える〔その10〕1999年5月号

株価

 サカイ引越センターの株価が急騰している。平成8年10月に上場し、直後には最高値4750円まで行ったものの、相次ぐ事件発生と株式市場の低迷から、大幅に値を下げ一時は741円まで落ちた。
 昨年は1000円台を続け、市況の悪化を受けてはいるものの、収益アップが確実に行われているなかで、どうも株価に反映されていない状況が続いていた。ところが2月27日から、確実に上昇し始め、4月に入って1500円を突破し、4月24日には2500円、そして4月30日には2990円まで急騰した。
 ニューヨーク市況の連続した好況を受け、日本でもその影響を受け始めた時期だった。ただ、2月27日、ある市況予測を行うホームページに「好業績割安銘柄」という項目があり、好業績でありながら割安感のある銘柄を紹介するコーナーでサカイ引越センターが紹介されていた。たまたまかもしれないが、不思議な一致だった。
 そこには「上場以来5%以上の増収を続けています。99年度は7%の増収を見込んでいます。業績は伸び続けているのに株価 は上場以来下落をして約5分の1まで下げています。現在の株価は1000円前後で1年間収斂して底堅い動きになっています。チャート的には1年以上のボックス状態で収斂しており、底値にあると言えます」という文面が掲載された。
 このコーナーでは、売上・一株利益・連結一株利益などが大きく伸びているのに株価が横這いを続けている銘柄を特に注目しており、「時間差はありますが、いづれ必ず割安の訂正から上昇に入る動きが見られます」という予想を打ち出していた。
 これを裏付けるような推移が、その後続いたわけだ。4月30日の株価の推移は、取引値2990円、前日比+140円 (+4.91%)、出来高1万3千株、株の時価総額は26,611百万円にもなっている。さらに業績面で、配当利回り 0.40%、1株配当12.00円、株価収益率26.98倍、1株利益110.82円という立派な数字を残している。
 サカイ引越センターの大証2部への上場は、業界から羨望のまなざしで迎えられた。しかし、当初の株価の動き、事件に関するマスコミ各社の報道姿勢など、マイナス面が強調されてきた。この間、経営陣、社員の頑張りで確実に数字を残し、株価には反映されないものの、積極的な経営で逆風に負けない体質強化を図ってきたのが、やっと認められてきたものと思う。 
 株価がすべてではないものの、上場会社であり、一般消費者を対象とする事業では対外的に見られる株価は重要な指標である。そういう点で今回の株価急騰は、実際の業績を反映したレベルへの第二の出発のような気がする。
 しかし、ここで、喜んではいられない。あくまで出発時に戻っただけで、これからが本当に同社を正当に評価する段階に入ってきたと考えるべきだろう。営業面での体制、社員の教育体制などは確実にレベルアップしているが、経営としてはこれからも正念場が続くだろう。



引越を考える〔その11〕1999年6月号

販売競争

 「引越業界の販売競争は激化している」というのは本当だろうか。
 単価競争であったり、顧客の獲得競争を行うには、よく考えてみると資本力を中心にした体力がバックにあっていえることだ。力ない業者がいても、現在では競争にもならない。よほどのノウハウと実践力がつかなければ、本当の意味で過当競争の中に身を投じることはできない。引越業者であってもそうだ。よく運賃が下がったとか、あい見積もりが多いという話は聞くが、実際に一件、一件の引越がすべて厳しいかどうかは、判断できないはずだ。
 引越は、何回もするものではない。しかし、するとなると厄介だ。そう言う点で、《安い、丁寧、安心》という基本原則は変わらない。最近、引越を2回続けてやってみて、引越業者が、競争が厳しいという理由で、顧客さえ契約できてしまえば、後はどうでもいいような風潮に危惧を感じる。最初の営業マンが、最後まで顧客の面倒を見れるような姿勢が重要な気がする。顧客にとって、最初の営業マン、契約をした営業マンがその引越業者の顔である。
 大変な作業をしてくださる現場の作業の方には申し訳ないが、作業が同業他社と同等なレベルでできていたら、あとは営業マンの丁寧さや、体力勝負のようなところがある。遠いところでの引越でもいいから、引越先への電話や、はがきを送るというのは、最初に契約した営業マンの名前で行うべきである。
 そうすれば、顧客が受ける印象はかなり違うような気がする。ミスがあってもその部分を勘弁しようかな、というところがある。やはり、生活の中に入りこむ仕事だけに、それだけ信用が重要だし、顧客の紹介などの具体的な方法も、はがきなどに連絡先や、紹介キャンペーンを明確に打ち出すことで、顧客開拓になるものと思う。
 そういう点で、同業他社に対する営業マンの対応が気になる。同業他社との差別化に、自社がどれだけ規模やサービスレベルが高いかを説明するのは結構だが、同業他社を差別化するために、他社を批判するコメントはどうだろうか。
 例えば、業界紙に掲載された他社の記事を持って回って批判したり、正確な会社情報を元にせずに、わけありのような説明をしたりするケースがあるようだ。
 はっきりいって、そんなことを営業マンが自分で考えているのなら、考え直して欲しい。経営者側で、指導をしている業者がいるとしたら、止めて欲しい。競争が激しいことをいいことに、他社を批判して営業がとれたとしても顧客は、引越業界はこんなものだとしかみない。
 あるセミナーで、運送業者の有名な方が、荷主が来場者の中に多いせいか「私ども運送屋ですから」という表現を使っていた。売上規模数百億円の経営者がこういう感覚では、困ってしまう。運送業界は、少しでも産業界における地位を上げる努力を行ってきている。引越業界は、宅配に次いで消費者に近い物流商品だ。引越業界に携わる経営者は、誇りをもてる業界にすべく、正当な競争を行って欲しい。


引越を考える〔その12〕1999年7月号

広告するということ

 引越業者の広告を見る機会が減っている。チラシ広告も丹念にチェックしているのだが、本当に見ない。そんなことを思っていると、先週チラシが入った。地元の引越業者として、案内が入っていた。関東では電話帳の広告に、早くから“渋谷区の引越センター”というキャッチフレーズの広告が多かった。
 電話帳での広告単価が高いため、地元の業者であることを、身近な引越業者として、主婦層を狙ってアピールしたものだ。このキャッチコピーが多かったことを見ると、効果はあったようだ。しかし、現在の電話帳をみると漫然と似たような内容に陥っている。どうしても、既存の広告やキャッチコピーを前提に作成するために、似たような内容になってしまう。たとえば、パック料金にしても梱包、開梱、輸送、据え付けをいくつかのメニューにしたものが多いが、できれば大胆なメニューで構成したモノの登場を願いたい。
 例えば、梱包数を明確にするとか、4トン車だとどれだけの荷物になるのか、どういう作業が必要か、具体的に女性の方が一人でやったら何時間掛かるのかを明確にして、それをいかに低価格で提供できるかを提案したり、比較した広告にしたらどうだろうか。
 何もしないでいい引越の広告が多いが、逆にどれだけの作業が本当はあるのかを明確にわかりやすくした広告で、搬入、搬出、梱包まで、幅広く受注する仕組みを考えてはいかがだろうか。
 ただ、上記のチラシに、「ピアノは自社で行うから安い」という表現があった。本当だろうか。このへんが怪しい。
 また最近ISOの取得などで差別化を図る広告もあるが、それならISOを取得していないことと、取得していることの違いを明確にしないと、ユーザーにはわからない。ISO取得にどれだけ苦労したのか、取得によるサービスレベル、品質がどれだけ従来と比較して向上したのか、具体的なものがないとわからない。名刺に立派なISOに関するマークが表示されても、広告はしかたがないかもしれないが、パンフレットにはそういった具体的な表示、明記が欲しい。
 物流業者は、自分達のやっていることの表現がうまくはない。しかし、引越という分野は、消費者に直結した商品だけにわかりやすい紹介が必要だ。
 ホームページにしても、引越料金のコストの考え方、サービス内容のきめこまかな中身を写真入りで紹介して欲しい。オプションばかりでなく、実際に引越する各種サービス内容をみせてほしい。自分達の世界では当たり前の内容でも意外に、具体的なものを紹介するだけで、安心感は高まるものだ。引越は考えてみれば顧客の不安をなくすことから始まるサービス商品だ。知らない相手に家の中をすべて見られる。引越の料金と共に、作業レベルの不安を解消する手立てをホームページに反映してみてはいかがだろうか。
 どうも顧客側に立ったわかりやすい紹介が意外に少ないような気がする。



引越を考える〔その13〕1999年8月号

パブリシティ

 引越業者にとっては、広告とは切っても切れない関係にある。昔、不動産業者との提携だけで商売をしていた引越業者が、「従業員、アルバイトの募集広告はしても、引越受注について広告はしない」といっていた時代が懐かしい。
 しかし、広告は投資に対してどれだけの反応があるのかという数字で考えると、かなり厳しいものがある。現在のテレビCM、ラジオCM、電話帳、新聞、雑誌、看板、チラシなどいろんな媒体があるものの、投資効果としては年々反応が落ちているのが現状だろう。
 そんななかで、投資がほとんどかからない宣伝方法として、テレビ、新聞などにニュースや記事が掲載される手法がある。いわゆる、パブリシティだ。
 一般企業なら、ニュースリリースを作成して、記者発表や記者クラブに投げ込んだり、親しい記者にネタを提供して、記事になることをいう。これは、別に企業として大きい小さいといったことよりもニュース価値があるか、その分野に詳しい記者にそのネタが伝わっているかにある。
 このHJ引越情報は、今年だけで3回も日経本紙で記事にとり上げられている。法人でもなく、一人で事業を行っている企業の記事が日経に掲載されるということは大変なことである。しかも一切広告もせずに、掲載されているわけだから、日経に全面広告をしても記事が掲載されない企業が聞いたらびっくりするできごとだ。このノウハウは、有馬代表が紙面で披露してくれるのを待つしかないが、一般的に見て、物流企業のこういった広報活動はほとんどの企業では行われていないといっていいだろう。行っているとしたら、日通、ヤマト、アート、サカイといったところだろうか。
 自分たちの会社をそういった報道関係に知らしめるいちばん簡単な方法は、まずニュースリリースを作って報道関係に送ることである。私は、業界の専門紙にいたが、ニュースリリースを出す物流業者は非常に少ない。自分たちをアピールする方法を知らないかのようである。
 自分たちが行おうとすることを報道関係者にうまく出せば、無料で紙面に掲載され、広告以上の効果を持つ。意外に思われるかもしれないが、上場会社でもほとんどニュースリリースをしていない物流業者が多い。これは広報に対する概念が日本では低いからだ。物流業界は特にその傾向が強い。
 新商品はまず記者発表を行うべきである。他社がやっていてもいい。その会社として、ホームページで引越受注を行うページを作成したとか。どこかの大手不動産と提携を強化したとか、他社から弊社に提携がかわったとか、料金体系を変えたとか。営業所を設置したとか。リストラによる経営戦略を見直したとか、ISOの取得準備をはじめたとか。どんなことでもいいから、ニュース価値がありそうな内容をニュースリリースにして、各報道関係者に送付する。別にその新聞を購読しているとかは関係がない。場合によっては、提携先の業界専門紙に送るのもいいだろう。
 ただ、ニュースリリースの作成が難しいかもしれない。次号ではニュースリリースの書き方について、書いてみよう。



引越を考える〔その14〕1999年9月号


ニュースリリース作成方法 <1>

 おかげさまで、ロジスティクス・パートナーを設立して1年が経過した。引越業界との関係は、この引越情報とのつながりが大きい。なんとか、掲載させていただいているだけでもありがたい話である。さて、前回でパブリシティについて述べ、ニュースリリースの作成について引き続き書かさせていただく。
 この1ヶ月で、2社のニュースリリースを作成した。もともと自社でニュースリリースを作成しているところもあったし、新商品を出したので、などの理由で依頼を受けた。
 しかし、依頼者には悪いが、ニュースリリースを誰に読ませたいのか、ニュースリリースによってどうしたいのかが、明確でなかった。パブリシティといえども、目的が明確でなければ、書き方、送付先、体裁も変わってくる。
 例えば、個人消費者向けなのか、不動産業者やハウスメーカーなどの法人向けなのかで、文体、送付先も違う。しかし、なんとなく記事として紹介されればいいというのでは、折角送付しても掲載されない可能性が高い。というのは、記者や編集者の視点は、自分たちの新聞の読者にメリットになると思って記事を書いたり、取材をしたりしているわけである。そのライン上の記事となると、ちょっとしたニュアンスで掲載されない可能性が高くなるわけである。
 そうすると、ニュースリリースを作成する上で重要なことは、送付する先の新聞社、雑誌社の性格を適切に把握しておかなければならないし、それにあった文書作成が必要となる。添付資料も少しずつ変える必要があるかもしれない。
 また、日経や日経産業、日経流通などの新聞では取り上げられやすいトレンドがある。IT(情報技術)、SCM、リサイクル、Web、キャッシュフロー、連結決算会計、合併、合弁、アウトソーシング、2000年問題といった言葉である。
 小さな企業でもこういった言葉が、見出し、文章内容の重要な要素であれば、思いがけない取り上げ方がされる。上場会社であれば、一面ものである。こういう言葉は、毎日、新聞の見出しを見たり、日経ビジネス、日経ストラテジーなどを見ていると自然と身につくようになる。私は長年専門紙にいたおかげで、こういった新聞、雑誌を常に読んでおり、傾向が肌でわかるようになったからいえるのだ。常に新鮮な感覚で、意識して見なければこうはいかない。そして、こういった単語をできるだけ、見出しに入れることからニュースリリースは考える必要がある。
 何を掲載して欲しいのか。もちろん、受注拡大を進めるのがねらいだが、そのためには、1年前からはじめているもので、少し効果が出ているものをニュースリリースにするといい。というのは、これからやることをニュースリリースで出しても実態が伴わないようなレベルで出してしまうと、逆に読者がその問い合わせをしても、対応できないようではクレームがつき、次の掲載が難しいからだ。では、次回は文章作成について紹介しよう。



引越を考える〔その15〕 1999年10月号

ニュースリリース作成方法 <2>

 まず見出しである。新聞、雑誌で読者が一番先に見るのは見出しである。見出しで、その記事を読ます気にさせなければならない。例えば、「引越事業から撤退!」という見出しであれば、どの引越業者でもこの記事は読みたくなるだろう。その新聞の読者層を想定して、見出しをまず考えなければならない。できれば、10文字ぐらいまで3本でつける。内容は重複せずに的確に記事内容がわか
るものにする。これが、本当は一番難しい。記事を書いても見出しが取れない記事を書くのが、記者として一番よくなのだが。しかし、ニュースリリースを書く人が記者ではないわけだから、ニュースリリース作成者にとって意外に難問かもしれない。
 まず記事は、決めたことから書く。そして、主語を明確にする。よく○○社(資本金1億200万円、代表取締役 ××××、本社=東京都中央区)などが、主語として出ているが、これは新聞社によって表記が決められている。しかも、非上場会社については、詳しく表記されているケースもある。一番そっけないのが、○○社のみの表示。一番詳しいものは、資本金、社長名、本社住所、問い合わせ電話番号まで入っているケースもある。
 そして、この主語の部分はできるだけ、多く表示するか、別記として、会社概要を最後につける。タイアップ、提携などは提携先の表示も同様にして、会社概要をつける。相手が大きい会社の場合は、相手の広報でも発表してもらうようにする。これが、意外に効果がある場合がある。
 書き手である記者にとって、大事なのが、文章内の企業がどういう企業で、問い合わせをする場合はどこにすればいいのかが、明確になっていないと文章内容の確認で困るのである。しかも、ニュースリリースを原稿にする記者は、まだ経歴が浅い場合が多いので、できるだけ間違った表記を避けるため、基本的な情報は、明確に表示することが大事だ。
 そういう点で、ニュースリリースを紙とフロッピーで提出するのも最近の傾向のようだ。フロッピーの場合、OS(Windows98、95、MAC)と使っているソフト(例えば、一太郎、WORDなど)の表記がいる。最近の記事作成はすべてパソコンで行うのがほとんどだ。
 では中身に入る。最初に決まったことを書くのだが、できるだけ短文で書く。
 「A社は10月25日、大阪営業所(大阪市中央区本町2-3)を新設する。」といった具合だ。この括弧内の表示は多用すると問題があるが、ニュース記事ではできるだけ文章を短くするといった作法で行われているため、うまく活用するとメリハリがきく文章になる。
 次に、理由を書く。例「関西圏でのマーケットを拡大させるため、設けるもので、3年前から準備を進めていた。」さらに、「個人客の価格競争が激しく、関西圏では法人営業をメーンに行うため、都心部に営業所を設け、営業展開を絞った形で行う。」といったところだろうか。
 理由で大事なのが、営業所を設ける理由であり、営業展開の戦略を挿入することである。中央区に引越業者の営業所が少ないため、こういった引き出し方で説明する。ではこの続きは次回へ。



引越を考える〔その16〕1999年11月号


ニュースリリース作成方法 <3><br>  11月5日号の週刊朝日に「三機工業/引越ビジネスの神業」という見出しが載った。2ページほどで紹介されている短い記事だったが、金融機関の合併の裏でリーディングルームなどコンピュータを数多く有した事務所の引越で神業的な対応を行う企業として紹介されていた。記事は非常にわかりやすいものの、合併などの裏方の仕事を行っているだけに、あまり紹介されてほしくない雰囲気の内容だった。
 こういった記事でもそうだが、取材を受ける立場の人が事業についてどう考えているのか、これが重要なポイントとなる。取材は無料の宣伝と思えば姿勢も変わるだろうし、広報の概念が裏方の事業なので紹介をできるだけしてほしくないというケースもあるだろうが、この記事を見て感じたのは、記者の姿勢がしっかりしているので、「いいように書いてくださった」というところだった。
 ニュースリリースの命は、ニュース価値のありかたである。前回、関東の引越業者が大阪に営業所を設置する内容を表記したが、あたりまえのことではニュースにならない。しかし、自分の行っているあたりまえの業務が実は充分ニュース価値がある場合がある。例えば、今回のようなケースもそうだし、「引越作業専門のスタッフ派遣会社を設立した」というのもニュース価値がある。
 引越でスタッフの派遣を頼むのは当たり前のことだが、派遣会社を設立するのは珍しい。ご存知とは思うが派遣業法が7月7日に改正されて、引越作業は派遣業でできる時代に入っている。規制緩和の時代だから、こういったことは当たり前のようにできるようになった。
 法改正による新規事業は十分にニュース価値がある。記事は、最初の決まったことから書いていくのだが、それに関する説明を順に書いていけば、充分に文章はできてしまう。場合によっては代表者のコメントなども括弧書きで書いてしまう。あくまで第三者になった気持ちで文章を書く。
 ニュースリリースを数多く見てきたが、日本初という表現がある場合は、それを裏付けるものがなければ、まず嘘か、広報責任者が世の中を知らないだけだと思っている。5年程前に大手コンビニの発表文で日本初が入っていたので調べたら、結局大きな間違いであったことがわかったことがあった。日本最大手のコンビニであっただけに、改めてこの日本初、世界初という言葉には常に疑うことにしている。
 あまり形容詞的な大げさな言葉は使わないようにすることが肝心だ。平易な言葉で簡潔にわかりやすくすることを心がけるようにする。詳しい説明が必要な場合は、図、表を添付する。写真も同封する。代表者の写真、ニュース内容の写真、会社案内、ニュースリリースに関係するチラシなどもそうだ。そして、最後に広報窓口を間違いなく入れる。電話番号と担当者名である。他社とのタイアップなら、是非とも他社の広報窓口を入れる。相手が大きな企業であれば相手からも広報してもらうようにする。最後に、何回も校正する。字句の間違い、表現の仕方など何回も校正する。作成者以外に2人は見てもらうようにする。
 そして次は、送付先について考えてみよう。


引越を考える〔その17〕1999年12月号

ニュースリリース作成方法 <4>

 ニュースリリースの活用で一番大事なのが、記事のミスがないことだ。
 先日、ある記者発表資料で記事を書いていたところ、校正ミスが一カ所、ホームページでの新情報と食い違うところが一カ所。ホームページで一カ所校正ミスを見つけてしまった。
 申し訳ないが、ニュースリリースは、正確な内容を記さなければならない。
 そうでないと、内容全体がうさんくさくみられる。しかも最近の企業チェックではホームページで確認する場合が多い。ニュースリリースを出すような会社はホームページを持っている場合が多く、そこでそれ以外の情報を調べる場合が一般化している。そういう点で、ニュースリリースとホームページの内容は正確を期するとともに、同時公開ぐらいを心がけて欲しいモノだ。
 不思議なことに、ホームページを持っている会社でも、ニュースリリースを貼っていない場合が多い。ニュースリリースは情報が生すぎる場合が多いからだろうか。しかし、できれば、ニュースリリースも貼るようにした方が、広報情報の一本化が図りやすいので、心がけるべきと思う。
 そして、今回はニュースリリースの送付先だが、これは非常に簡単だ。
 メディアデータという、新聞、雑誌の発行内容をすべて網羅している本がある。まず、これを手にすればわかるのだが、世の中には数多くの業界が存在し、新聞、雑誌が発行されている。どこを選ぶかは、かなり最初は戸惑われるかもしれないが、分野ごとに分かれており、発行部数、発行回数などを目安にして対象を絞ることになる。
 記事を書いてくれるかどうかは、発行元の責任者の自由である。しかし、記事は取材するタイプとニュースリリースにより記事にする二つのタイプがある。しかし、景気が悪いために記事が無くて困っている新聞雑誌がほとんどである。
 ニュースリリースは、どこの会社でも自発的に作成しなければならない。そして、その文章を各出版物の編集長、発行者宛に郵便で送付する。
 では、送付する先だが、一般消費向けなら、4大新聞、個人向けの雑誌、住宅関係の雑誌などメディアデータで探してみる。企業向けなら、日経、日経流通、日経産業、日刊工業、流通サービス新聞、日本工業新聞、東洋経済、日経BP、ダイヤモンド社、システム関係、インターネット系なら、日経ナビ、インターネットマガジンなど、マーケットに応じて送付先を検討する。これをパソコンの住所録ソフトで管理して、編集長宛で送るわけだ。
 最近は、メディアデータのほかに書誌ナビというCD-ROMで簡単に検索できるシステムなどができており、これを活用する方が安くできるかもしれない。
 ニュースリリースはほとんど費用がかからないだけに、当たるも八卦でやってみてはいかがだろうか。



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